† 2010年10月 †
「マリアはこれらの出来事をすべて心に納めて、思い巡らしていた。」
現吹田教会助任司祭 萩原義幸
「恵みあふれる聖マリア・・・」ごミサに参加しようと聖堂へ向かって歩いていると、聖堂の中から聖母マリアへの祈りが聞こえてきます。祈りで満たされている聖堂に入って行くとなんとなく厳かな雰囲気に身の引き締まる思いがします。教会では10月がロザリオの月にあたっています。ロザリオの祈りを通してわたしたちの信仰生活を豊かにしていくことが出来ればと思います。
ロザリオの祈りは、カトリック教会において広く親しまれています。ロザリオの祈りを通して、福音に描かれた救いの出来事を黙想します。聖母マリアへの祈りを唱えながら、聖母マリアとともに、主イエス・キリストによって実現した救いの出来事を思い巡らすように招かれています。
このロザリオの祈りは、歴史とともに発展し、一人のドミニコ会士によってイエスの生涯の最も大切な受肉、受難、栄光の場面を祈ることが定着していきます。さらに、彼がロザリオの祈りの創始者をドミニコ会の創立者ドミニクスと伝えたことで、彼がロザリオの創始者とみる伝説が広く知れ渡るようになりました。
ロザリオの祈りは、アイルランドの修道生活の中から出てきました。修道院では、毎日全詩編150編を祈ることが理想とされていました。それが実行できない時に、150編を三つに分けてそのうち、50編、もしくは、100編を祈るようにと勧めていたそうです。さらに信徒には、暗記できる詩編句や主の祈りを繰り返し祈ることが勧められていました。
11世紀から何度も繰り返すことができる祈りとして、聖母マリアへの祈りが普及していきます。これが、のちに聖母マリアへの祈りを150回唱えるようになっていきました。13世紀半ばには、心を込めて祈るために一日50回に限定されて、これがロザリウム([ラ]rosarium)と呼ばれるようになっていきます。また、マリア崇敬の高まったこの時代に、マリア像をバラの冠で飾る習慣がありました。これに親しんでいた一人のシトー会員(シトー会は観想修道会の一つ)が幻の中で出会ったマリアから「聖母マリアへの祈りによって作られた霊的なバラの冠で迎えられることがより大きな喜びです」と伝えられた、という伝説が残されています。そして、現在の形に至るまで、少しずつ発展していったのです。
このように歴史の中で、発展していったロザリオの祈りは、常に聖書のみことばと結ばれていました。わたしたちは、このロザリオの祈りを通して、みことばを良く黙想し、特にイエスの生涯を聖母マリアとともに思い巡らしながら、救いの道を歩んでいくことが出来ればと思います。カトリック教会が大切にしてきたロザリオの祈りを10時半のミサ前に心を合わせて唱えていますので、参加してみてはいかがでしょうか。
「マリアはこれらの出来事をすべて心に納めて、思い巡らしていた。」(ルカ2.19.)
上智大学新カトリック大事典編纂委員会編『新カトリック大事典』第四巻、1448-1450参照。