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人類はいよいよサルからも学ぶべきときが来ました。
もう絶版になってしまった本に、「幸島のサル」(ポプラ社)というのがあります。著者は三戸サツエさんという方で、小ザルが海で芋を洗って食べ、その行
為
が群に広がる様子を観察した方です。その本に、赤ちゃんに死なれたウツボという名の母ザルの話があります。銀色の毛並みをした小柄な母ザルです。ある日、
死んでぐったりとしたわが子を抱きかかえて、浜辺に出てきました。いつもの年なら雨がふって、死体は腐り始めますから、やむを得ず捨ててしまうのですが、
その年は日照り続きで赤ちゃんザルは腐らず、乾燥し始めたのです。それで、日が経つにつれて干涸らびて、サルかどうかも分からないぐらいどんどん小さく
なって、ミイラになってしまいました。それでもウツボはわが子のどっちが頭でどっち足なのか、ちゃんと分かっていて、決して逆さまに抱えるようなことはな
かったそうです。そのうち、干涸らびたわが子は二つにちぎれてしまいました。すると、大きい上半身の方をとって、それを相変わらず大事に抱えていました。
ウツボはメスザルですが、ボスでした。あるとき、エサの奪い合いで、サルたちは猛然と大ケンカを始めたのです。彼女は仲裁に入り、何とか群を沈静化させま
したが、そのとき大事に抱えていたはずの赤ちゃんザルをどこに置いたか、分からなくなってしまったのです。懸命に捜しましたが見当たりません。夕闇迫るな
か、ウツボはポツンと寂しそうに佇んでいました。それで、三戸さんはミイラになった子ザルを探し当てて、そっと岩の上に置いてやりました。それを見つけた
ウツボは、わが子を抱きかかえると、森の中へ消えてゆきました。ウツボはなんと59日間も大事に抱き抱えていたのでした。
奇跡はここから始まります。この本を読んだ少女から、三戸さんに手紙が来たのです。そこには、こうしたためられていました。「ウツボの話を読んで、涙が
止
まりませんでした。私にはお母さんがいません。離婚して、家を出て行ったのです。・・・・中学に入ってからグレて、非行を重ね、自殺を図ったこともありま
した。私を捨てたお母さんが憎かったからです。でも、ウツボが死んだわが子を抱き抱えて歩く姿にお母さんが重なり、まだ小さかった私を連れて行けなかった
お母さんは、私よりももっと辛かったに違いない、と思えるようになりました。いまでは、私は真面目になり、年をとったおばあさんを助けています」と。これ
が正真正銘の「回心」であり、救いです。それは、「内観」で得る自己刷新と同じものです。憎んでいた人間を、一転、柔らかい心で思い遣れるようになる。そ
うして世界が変わる。「敵を愛する」という不可能なことが現実となる。これが内観のダイナミズムです。私は司祭として、説教という形式で言葉を操ることを
常としていますが、生き方で証しする力は何と大きいことかと思いました(サルの生き方でさえ)。「ああ、言葉じゃないんだよね」と。そして、「回心の前に
反省。回心は神からの恵み、反省は恵みを得るための私たちの業」と。サルに脱帽(反省)です。サルの世界には、まだまだ信じられないエピソードがたくさん
あります。
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